空論上の砂、楼閣上の机。

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紋切り型公式主義の敗北:譲歩の as 編

As bizarre as such tales may strike those who first hear them, they typically also sound somehow plausible.

という英文を見つけて「ちゃんと気をつけないと誤訳しそうなタイプだな」と思いググってみると、案の定質問されていた(asの用法 文法解釈お願いします。 -As bizarre as such tales may str- TOEFL・TOEIC・英語検定 | 教えて!goo)。ベストアンサーはこちら:

このas~asは同程度を示すものではなく、譲歩節を導くものです。本来は bizarre as such tales~ ですがアメリカ人はas 形容詞・副詞・名詞as s vを使うことがありますが違いはありません。書き換えるなら

Although such tales may strike those who first hear them bizarre~ となります。

bizarreはstrike O CのCになっています。strikeはSVOCでOをCの状態にすると言う意味があります。

ベストアンサーによると、どうやら those who first hear them は bizarre な状態になっているようだ......? しかし、後ろの they が such tales である(they sound plausible からわかる)ことを考えると、どう考えてもおかしい。そして、もう一箇所致命的に間違っている部分があるのだが、そこはネタバレになるのでまだ控えておこう。

ベストアンサーではないほうは次の通り。

このas .. as は逆接(=though)の接続詞です。 補語を文頭にもってくる倒置が特徴で Though he was poor, he managed to lead a decent life. =As poor as he was, he mangaed to lead a decent life. という関係が成り立ちます。 受験参考書ではPoor as he was, he managed to ...と 文頭のasを省いた形で紹介するものが多いですが、 アメリカ英語ではasのついたものが多いです。

お示しの文は Though such tales may strike those who first hear them as bizarre, ... と書き換えられます。 意味は次の通り: この種の話は、はじめて聞く人には変な話にきこえるけれど、どの話を聞いても、何となくありそうな気がしてくるものだ。

なんとなく合ってそう......が、Though such tales may strike those who first hear them as bizarre の as ってどこから来たんだろうか?

さて、もっと検索してみると、この文章について議論されていたスレッドを発見した(だれかこれ翻訳できる強者いる?? part 2)。せっかくなので見てみよう。

317 :名無しさん@英語勉強中:2007/08/07(火) 23:29:06

As bizarre as such tales may strike those who first hear them, they typically also sound somehow plausible.

これ訳せる方います? 構文がはっきり言ってワケ分からんです。

から始まっている。

320 :名無しさん@英語勉強中:2007/08/08(水) 00:53:55

>>317

初めて耳にする人々を強く印象づけるほど奇怪であるにもかかわらず、その手の話は例によってどこかまことしやかでもある。

じゃ、ないでしょうか?ちがうか?

「人々を印象付ける」というのは日本語として変だし、訳文全体も日本語として少し不安定な感じがする。

322 :名無しさん@英語勉強中:2007/08/08(水) 01:21:52 >>317

訳は簡単。

「こんな話が初めて聞く人の心を掴むことがあるのと同様に奇妙なのは、それがまた通常どこかもっともらしく聞こえてしまうことだ。」

文法的にはどう説明つくのかねぇ。 いずれにせよ、as asが文頭に来る典型的な形の一つ。

誤訳。そもそも「それがまた通常どこかもっともらしく聞こえてしまうこと」が奇妙であるとはどこにも書いてない。

328 :317:2007/08/08(水) 23:07:02

>>320>>322

レスありがとうございます!

これはbeing省略の分詞構文とかなのでしょうか…。 それとも文頭のit isの省略とかかな。むむぅ。

どうでもいいけど being 省略とか教えるのもうやめたほうがいいと思う。この前読んだ京大英語の本でもずっと being 省略ばっかり言っていたが、そう考えるメリットが分からない。

329 :名無しさん@英語勉強中:2007/08/09(木) 00:32:08

>>317 As 形容詞 as + 主語~動詞、、で始まる文は、その後につながる事柄に対して、 "何々であるにもかかわらず"的な意味を表すときに使われます。説明が下手で申し訳ないw。
例 : As good as Michael Jordan was at basketball, he was only OK as a baseball player.
マイケルジョーダンはどんなにバスケットボールが上手くても(バスケがすごく上手いにもかかわらず)、野球選手としては平凡だった。
320の訳が正解で、322の訳はちょっと違います。

これも最初に紹介した路線で考えている。

330 :317:2007/08/09(木) 00:42:54
>>329さん、有難うございます! そんな文があるんですね。でも Young as he is, he is prudent.「彼は若いのにもかかわらず、慎重だ」 なんていう文もありますしね。これらのasは、なんか繋がりがあるのかも知れませんね。


331 :名無しさん@英語勉強中:2007/08/09(木) 00:47:09
付け足すと、例のようにas__asで始まる文は、Althoughに書き換えても同じような意味になりますが(Although Mike Jordan was great at basketball,...),as__asの方が、その形容詞(又は副詞の場合もある)で表わされる事が強調されます。"本当にバスケが上手いけど"みたいな、、、連投/説明下手スマソ。


332 :名無しさん@英語勉強中:2007/08/09(木) 00:52:22
>>330 冒頭のYoung as he isはおっしゃるとおり、As young as he isの最初のAsが省略されたものです。


333 :322:2007/08/09(木) 01:23:02
>>329,331,332
それだとbizarreが後ろのasの節に収まらないのがおかしい。
元が倒置構文なんだから。

そうそこ!!!

334 :322:2007/08/09(木) 01:37:03
もうちょっと説明しとこうか。
(As)young as he is はAlthough he is young,です。
such tales may strike those who first hear themのどこかにbizarreが入る余地がありますか?


とはいえ、私もこの構文が文法的にどう説明つくのか昔から謎です。

そうそこ!!!(2回目)

335 :名無しさん@英語勉強中:2007/08/09(木) 02:49:14
Such tales may strike those who first hear them as bizarre. ということです。
Strike 誰々as 形容詞 は、誰々に(形容詞)という印象を与える、っていうこと。
例 : That sentence struck me as odd. わたしにはその文は変だと思えた。
このasは時々省略される事があるので、原文のようになったんですね。

残念ながら、この as は省略されない。が、それ以外は完璧に核心をついている。

どういうことか。335が言うように、もとは S strike O as C の形なのだ。当然 C の部分には形容詞も入る。しかし、これを譲歩させるとき、As C as S strike O となってしまう。すると、(As) adj. as S V の形と見分けがつかなくなるのだ! これが紋切り型公式主義がつまづくポイントだったというわけであって、この事実をもっとハッキリと言うならば、この文章で文頭の as を省略することはできない

実際、最初の質問サイトで、ベストアンサーではないが訳文がだいたい合っていた方がいらっしゃったが、多分 as ... as S V を省略せずに書いたものと判断して、ただそれだと辻褄が合わないから無理やり strike ... as をくっつけといた、というのは邪推に過ぎるだろうか。

というわけで「そういった話を初めて聞くと奇妙に思われるかもしれないが、概してどことなくもっともらしくも聞こえるのだ。」とでもするのが正しいだろう。

ちなみに、慶応理工の問題だと書いてあったので調べてみたら、たしかに慶応理工の2003年第2問だった。慶応英語の出題形式もあまり知らなかったのだが、当該箇所は全く問いに付されておらず、しかも選択肢形式だった。というわけで、この部分はテキトーに読んでも正解できる問題だった。よかったよかった。

【読書録】京大入試に学ぶ英語難構文の真髄

京大入試に学ぶ 英語難構文の真髄(エッセンス)

京大入試に学ぶ 英語難構文の真髄(エッセンス)

帰省中に暇になるときがあると困るだろうからと買った。帰省は帰省でとても充実してはいたが、一人で移動する時間や就寝する前の時間はやっぱり暇だったので、ちょこちょこ読み進められた。

まず第一印象として、京大の問題を見たことがなかったので新鮮だった。が、当然「構文集」である以上、一続きの文章の中から段落をボコッと抜き出してきているので、文脈が分からない。単独でも十分意味が完結しているものならまだしも、正直前後の文脈がないと意味がわからないものが散見された。いくつかは筆者が注を与えているが、それにつけても、これを過去問集として用いるのは(受験生にとっては)あまり得策ではないかも? 受験生だと、まずは過去問を一通り解いた上で、この本を読んでみるのがいいのかもしれない。まあ過去問って実力試しのために “とっておく” ものじゃないから、どうでもいいとは思うけど。

次に英文を読んでいく中で、英文解釈教室は京大英語でさえオーバーワークという言葉の意味がよく分かった。英文解釈教室もそこまで難解にすぎる文章を集めてきているわけではない以上、どの大学でも基礎レベルだろうと思っていたが、少なくともこの本に載ってある問題を見る限りは、英文解釈教室もオーバーワークになるぐらいの簡単さだったように思えた。もちろん一部は歯ごたえのあるものもあったが、構文把握という点では素直だったと思う。

ところが、

Executive women are just as ambitious as, if not more ambitious than, men.

The Washington Post: January 30, 2014

という部分があり、これを「破格」という項を設けてちゃんと解説している。これにはもう脱帽してしまった。ちなみに、アルク英辞郎

just as, if not more, important as 《be ~》~と同等かそれ以上の重要性を持つ、〔主語の〕重要性は~に勝るとも劣らない

という項目を設けているが、多分これは誤訳だ。ただし、語尾がasになっているのは本質的な差異ではない。それは expressions - What’s the difference between ‘as much, if not more, than’ and ‘as much, if not more, as’? - English Language & Usage Stack Exchange が参考になると思う。

そう、この本の強みは「辞書や参考書にはあまり載っていないけど、実は出題されている言い回し」をキチッと取り扱っているところなのだ。たとえば

  • apparentlyは「明らかに」ではない
  • supposedlyは「想像上の」と覚えない方がいい
  • cannot help do ingは「〜せざるを得ない」ではない

こういった点を京大の過去問を通して意識できるのは非常に強いメリットだと思うし、実際見ていて「えこれを受験生に問うの?」と思うようなことも(ごく稀だが)あった。何の役に立つのかよく分からないものはやっぱりモチベーションが湧かない......この本の中にもそんな内容の文があったような気がするけど、その点、モチベ向上のためとしては、本書はその試練を通り抜けていると思う。

今後暇があったら京大の英語も埋めようと思うけど、本書は結構「後期」の問題を扱っているので、実は市販の過去問を著しく網羅されている......というわけではないだろうと予測している。「過去問を取っておく勢」も、その点で嬉しいかもしれない。

情報幾何学ブックリスト

半年前ぐらいに情報幾何学にハマってました. ある程度勉強したら飽きたので極めてはいないのですが, その際に読んだ文献を紹介します. こと情報幾何においては, 日本人が創立者であるとともに, その創立者たる甘利俊一先生は非常に説明が上手で丁寧な方なので, われわれ日本語を解する人間にとっては実に恵まれた環境にいます.

どれも読んだ風で感想を書いていますが、読み飛ばしたところもちょっとあります。ご了承ください。

情報幾何の方法【応用数学[対象12]】 (岩波オンデマンドブックス)

情報幾何の方法【応用数学[対象12]】 (岩波オンデマンドブックス)

最初の方で多様体論や微分幾何の話をまとめたあとに, 情報幾何に触れています. 数学書の中でも分かりやすく, 厳密性を失う操作を行う際にはコメントがちょこちょこ入っている印象があって, いい本だと思います.

情報幾何学の基礎 (数理情報科学シリーズ)

情報幾何学の基礎 (数理情報科学シリーズ)

前と比べるとガチガチの数学書というイメージになりますが, それでも説明に関しては(数学書という括りに入らないためか)かなり分かりやすいです. また, Chentsovの定理のステートメントと証明をどちらもちゃんと書いてあるのはこの本しか見たことないです. また, 出版年は前よりも大分後なので, 応用範囲も色々なものが述べられています.

理論体系として美しいかどうかはさておき、計算に慣れるという点では一番手っ取り早いコースになっています。特に甘利先生が「〜〜はどうでもよい」とバッサリ切り捨てているところがロックです。実際かなり分かりやすいです。

東進数学特待で約100万円得した話

しばらくブログを書いていなかったのは, 随分前から在籍だけしていた東進の数学特待の期限が2月末で切れることに気づいたからです. せっかく無料なのにほとんど元を取れずに終わってしまうのも癪なので本気で消化しました. 一日何時間受けたかを判断できないぐらい「時間があれば受けまくる」という生活を過ごしていました. とりあえず今までに取った講座を並べてみます.

  • 数学ぐんぐん 基本
  • 数学ぐんぐん 応用
  • 微積もぐんぐん 基本
  • 微積もぐんぐん 応用
  • 東大対策数学 IAIIB
  • 東大対策理系数学 + 夏(長岡)
  • 東大対策数学 論理編
  • 東大対策数学 図形編
  • 最上位への数学
  • 東大対策文系数学(宮嶋)
  • 東大対策理系数学 + 夏冬(宮嶋)
  • 大学の数学 線型代数
  • 大学の数学 基礎解析

通期講座は75600円, 講習講座は18900円なので, 全部で926100円の得をしました. 頭おかしいですが, 最近東進はさらにこの方針を全面的に突き出しているようで, 中1のうちから数学特待を認定させる動きも公式HPで発表しています. 実際, 宮嶋先生は今年数学オリンピック系の講座を収録しており(僕の世代は未収録なので受けられない!), どんどんと東進は中高生のうち「受験勉強になんて目もくれないトップ層」たちの存在を他のどの塾よりも強く認識した上で青田刈りを行っているというわけです. しかも, やはりこれだけ高いお金を一般生徒から徴収しているおかげで, 一流の講師が集まっており, ちゃんと講座を受ければ正直力はめちゃめちゃつくようになってると思います. そういうわけで東進は日本最高峰レベルの中高生に対して一気に力を拡大させることに成功した, というわけです. この図式は他の塾ではそうそう破れないと思います. 唯一破れるのは我らがK会だけですが, K会は「アカデミア」という感じでゆったりと牧歌的にやっているし, そうでなきゃK会がK会でなくなるので, ひとまず東進はここしばらく鉄緑会さえも圧倒して勝ち続けるでしょう. 弱者を搾取し, 強者に還元するという, 実に資本家が好みそうな図式にオブラートを包み続けることで甘んじていることに成功したわけです. 恐ろしいですね. 実際、宮嶋先生や青木純二先生など、数学予備校界で名を挙げている実力派の講師を最近どんどん集めているように思えます。今後の動向を野次馬として見守っていこうと思っています。

自分より優秀な後輩って

純粋な心の持ち主や歳を重ねたりして落ち着いた人だと「ほうすごいな」ぐらいで終わると思いますし、もっといえば「年齢はまあそんなに問題ではないよね」ぐらいの認識にもなると思います。自分はだいぶんそうなってきたのですが、昔は「自分なんかより格段に上だし、自分なんかじゃダメなんじゃないか......」みたいな自分を卑下する方向に行ったり、「自分にはコレがあるしあんなのどうでもいい」などとすっぱいブドウ全開になったりしてました。でも、こういう態度ってよくよく考えたらおかしいですよね。

いやだってよく考えてくださいよ。たとえばあなたがランニングが好きだとしましょう。あの疾走感とかが好きで、もうだいぶん習慣にもなって生活の一つを成しているわけです。そんなあなたに「お前よりもっと速く上手に走れる小学生がいるんだぞ」と言ってきた人がいたところで、「自分はランニングに向いてないんだ......」ってなりますか? ゴルフでもゲームでもお酒でもセックスでも薬物でもなんでも結構ですけど、そんなわけないですよね。結局趣味の次元なら誰だって「いや好きでやってるんだし......」としかならないはずです。

じゃあなんでいざ勉強とか(あるいは僕は知らないですけどお金稼ぎとか?)になればそういう気持ちになるんですか。好きでやってると違うんですか。好きでやってるわけじゃなくて、しぶしぶそれでしか食っていけないから他に選択肢がないなら、向いてないとかそういう弱音吐いてる暇じゃないですよね。別に好きでなくても、むしろ好きでもない方が「へーすごいね」っていう平穏な気持ちで傍観できると思うんですよね。

たしかに自分より若いのに優秀な人を見て葛藤にも似たモヤモヤ感を抱くっていう経験は人生で1, 2回ぐらいあったほうがいいんでしょうけど、もうある程度歳を重ねたり経験を積んだりした上でもまだつらくなっている人もいますよね。今から過激なことを言うんですけど、「それは本当にやりたいことなんですか? 人生を賭ける価値があるんですか? 死ぬ前になって『今まであれに打ち込んできたのは大正解だった』って肯定できることですか? 人に胸張って言えますか? 惰性で人や制度に流されて今となってはなぜかわからないし大して面白くもないけどやってるわけじゃないですよね?」って聞きたいです。別に社会の役に立たなくても全然構わないと思いますし、いわんや業績とか実績とか、そんなの出なくたって死にはしないじゃないですか! 一番大事なのは「俺はこれをやれてて嬉しい」って気持ちじゃないんですか? ランニングだってゴルフだってお酒だってゲームだってセックスだって、副作用を度外視すれば「やってよかった」ってなりますよね?

ただ、お金を稼がなければいけないというのはわかります。その点において悔し紛れに生活苦が出ちゃうのはいいと思います。けどそれはかなりレアケースだと思ってます。

なんか発散したかったので書きました。乱文ごめんなさい。

MWG 第1章 選好と選択

なんかレポート書くために第6章の前半をちょっと読んでたら, 割と面白かったのでちょこちょこ読んでみます. 更新は不定期です. なんか誰かを対象としないと迷走するので, 部活の後輩(中1〜中2)を対象に書くことにします.

Microeconomic Theory

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当方, 経済学は全く勉強したことがないので, ミスやトンチンカンな言説があったらすぐ教えてください. また, 練習問題を参照する際は 「→ Ex. hoge」と書きました.

さて, ミクロ経済学は経済活動を「個々人が私益を追求する経済主体間の相互作用」としてモデル化します. したがって, 個人の意思決定について考察するのが先決だというのは納得できることだと思います. 意思決定をする以上, その舞台となる選択肢 (alternatives) を考える必要があります. ただし, 選択肢にダブりがあっては面倒なので, 互いに排反 (mutually exclusive) だと仮定します. 経済主体は選択肢について何らかの形で選好 (preference) を持っているので, 「二項関係」を用いるアプローチと「選択規則」を用いるアプローチとで考察することができます. 順に見ていくことにしましょう.

選好関係

選択肢を表す空でない集合を以下断りなく $X$ と書きます. このとき $X$ 上の二項関係 $\succsim$ を選好関係 (preference relation) といい, $x\succsim y$ なら「$x$ は $y$ と少なくとも同程度に好ましい」($x$ is at least as good as $y$) といい, $x\succsim y\land y\,{\succsim}\mathllap{/\,} x\iff x\succ y$ なら「$x$ は $y$ より(厳密に)好ましい」($x$ is preferred to $y$) といい, $x\succsim y\land y\succsim x\iff x\sim y$ なら「$x$ は $y$ は同程度である」($x$ is indifferent to $y$) という.

定義1.(合理性)

任意の $x,y\in X$ に対して $x\succsim y\lor y\succsim x$ が成り立ち(完備性), 任意の $x,y,z\in X$ に対して $x\succsim y\land y\succsim z\Rightarrow x\succsim z$ が成り立つ(推移性)とき, 選好関係 $\succsim$ が合理的であるという.

完備性は「どの2つを選んできても『こっちの方が好き!』と返せて, 『いや〜優劣つけられないよ』などと返さないこと」を指していて, 推移性は「三つ巴みたいな状況が起こらず, 完全に矛盾しないロンリ的な嗜好をもっていること」を指していると解釈できます. 当然, 現実の人間は煩悩と優柔不断さに塗れているので, そんなシンプルには行きません. たとえば「5cmのアイスと5.00000001cmのアイス」をノーヒントで出しても「いや同じじゃね...?」となりますが, どんどん続けていって「5cmと6cmのアイス」ぐらいになるとようやく「お, こっちの方が大きいじゃん」とわかります. しかしこれは推移性に矛盾するケースだといえます. 他にも色々みてみましょう.

例2.(フレーミング効果)

Kahneman, Tversky らが1984年に提起した認知バイアスの一種. 次のような状況を考えてみよう.

①「125ドルのステレオと15ドルの電卓を買おうとしています. ところがセールスマンが言うには, 電卓が5ドル割引で徒歩20分の店で売られているらしい. ステレオは同じ値段とのこと. 店まで歩きに行くか?」

②「125ドルのステレオと15ドルの電卓を買おうとしています. ところがセールスマンが言うには, ステレオが5ドル割引で徒歩20分の店で売られているらしい. 電卓は同じ値段とのこと. 店まで歩きに行くか?」

このとき, 大多数の人は①>②で「歩きに行く」を選ぶ. そこで次の状況を考えてみる.

③「品切れだったのでその店まで行かなければならないが, 補償として5ドルもらえることになった. しかしステレオ側か電卓側かを気にするか?」

すると, ③は「どっちでもいい」が大半を占めるので, この思考実験においては推移律が成り立たなくなった.

例3.(コンドルセのパラドクス)

選択肢が $\{a,b,c\}$ で, Aさんは $a\succ b\succ c$, Bさんは $c\succ a \succ b$, Cさんは $b\succ c\succ a$ という選好を持っているとする. このときに投票をとると堂々巡りとなり, 推移律は成り立たない.

例4.

たとえばある喫煙者が「一日一本ぐらいは吸いたいけど, ヘビースモーカーってのはやだね」と思っていたとしましょう. ところが吸っているうちに「やっぱりヘビースモーカーのほうがいいや...」となれば推移律は崩れます. 依存性が高い行為によく見られます.

とはいえども, 物理学と同様な感じで, 所詮はモデル近似です. ひとまずこのモデルもそんなに大失敗するわけではなさそうだし, 失敗したらまた作り直したり調整したりすればいいわけです.

ひとまず, 合理性を仮定することで次のような性質が従います.

命題5.

合理的な選好関係 $\succsim$ に対し,

① $\succ$ は任意の$x\in X$に対して$x\,{\succ}\mathllap{/\,}x$であり(非反射性), 推移性を満たす.

② $\sim$ は反射性, 推移性を満たし, 任意の $x,y\in X$ に対して $x\sim y\Rightarrow y\sim x$ が成り立つ(対称性).

③ $x\succ y\succsim z\Rightarrow x\succ z.$

証明. 明らか. (→Ex. 1.B.2, 1.B.1)

省略とかではなく, 本当に明らかです.

定義6.(効用関数)

任意の $x,y\in X$ に対して $x\succsim y\iff u(x)\geqq u(y)$ となる関数 $u\colon X\to\mathbf{R}$ を選好関係 $\succsim$ を表現する効用関数という.

明らかに効用関数は一意ではありません. 直観的にも論理的にもアタリマエです.(具体的には単調増加関数を噛ましてもOKなことをいえばよいです→Ex. 1.B.3)

例7.

$u(x)=u(y)\Rightarrow x\sim y$, $u(x)>u(y)\Rightarrow x\succ y$ と定めた $u$ は $\succsim$ を表現する効用関数. (→Ex. 1.B.4)

命題8.

選好関係が表現可能ならば合理的である.

証明. $\mathbf{R}$は通常の大小関係により全順序集合であるからよい.

逆が成り立つかというと, $X$ が有限集合なら成り立つ.

命題9.(→Ex 1.B.5)

有限集合上の選好関係に対し, 表現可能であることと合理的であることは同値である.

証明. 命題8より「有限集合 $X$ 上の合理的な選好関係 $\succsim$ に対し, $\succsim$ を表現する効用関数 $u\colon X\to\mathbf{R}$ が存在する」ことを言えば十分である.

$\succsim$ が合理的なので $\sim$ は同値関係であるから, 商集合 $X / {\sim}=\{X_1,\dots,X_n\}$ が存在する. 仮定から $\succsim$ は全順序だったので$X_1,\dots,X_n$を $X'_n\succsim\dots\succsim X'_1$ と並び替えることができる. ここで同値類 $X'_i$ に属している $X$ の元に対し $i$ を対応させる関数は $\succsim$ を表現する効用関数となっている.

コメントで前の証明のマズいところを指摘していただきました. ありがとうございます.

選択規則

定義10.(選択構造)

$X$ 上の選択構造 (choice structure) とは組$(\mathcal{B},C)$で, $\mathcal{B}\subset 2^X\setminus\varnothing$, $C\colon\mathcal{B}\to\mathcal{B}$ かつ $C(B)\subset B$ を満たすもの.

なお, $C(B)$ は $B$ が与えられたときに考えられる選択肢の集合と解釈できます. $C(B)\subset B$ という条件は「いや $B$ から選んだつもりなんだけど、なんか $B$ にない選択肢選んじゃった」ということは起こらないようにするためです。

例11.

$X=\{x,y,z\}$, $\mathcal{B}=\{\{x,y\},\{x,y,z\}\}$ とする. $C_1(\{x,y\})=\{x\}$, $C_1(\{x,y,z\})=\{x\}$ とおけば, $(\mathcal{B},C_1)$ は選択構造となる. 特に, 「問答無用で $x$ を選ばせる」場合だと解釈できる.

他にもたとえば $C_2(\{x,y\})=\{x\}$, $C_2(\{x,y,z\})=\{y\}$ としても選択構造は入る.

とはいえども, モデルを構築する際に $C_2$ のような場合は省いてもよいでしょう. 選択肢によって嗜好が変わってしまうのは少し変だし面倒だからです. 特に2個の選択肢についてそういった状況が起こらないとする公理を顕示選好の弱公理といいます. 顕示選好の弱公理を定式化するにあたって, 顕示選好関係を定義しておきます.

定義12.(顕示選好関係)

選択構造 $(\mathcal{B},C)$ に対して顕示選好関係 $\succsim^{\star}$ を次のように定義する.

$$x\succsim^{\star}y\iff{}^{\exists}B\in\mathcal{B}, x,y\in B, x\in C(B)$$

ここで $y\in C(B)$ の可能性もあることに注意. その可能性が排除されているとき顕示的に好ましい (revealed preferred) といい, 排除されていないとき顕示的に少なくとも同程度に好ましい (revealed at least as good as) といいます. なお, 顕示選好関係では特に完備性や推移性を要請しないので, 比較する際には条件を確認した上ではないといけません.

さて, 上で定義した言葉を用いれば, 顕示選好の弱公理とは「$x$ が $y$ と顕示的に少なくとも同程度に好ましいなら, $y$ が $x$ より顕示的に好ましくなることは有り得ない」とできます. そこで「二項関係」を用いるアプローチと「選択規則」を用いるアプローチとが出揃ったわけですが, 結局これらはどういう関係なのかについて考える必要があります. すなわち, 「合理的な選好関係を持ってたら, ちゃんと顕示選好の弱公理を満たせるような選択はできるのか?」ということと, 「顕示選好の弱公理を満たすように選択してたら, 合理的な選好関係は存在するのか?」ということを考える必要があります. 結論からいえば, 「前者は正しいけど, 後者はわからない」となります.

両者の関係性

前者について議論しましょう.

定義13.

合理的な選好関係 $\succsim$ に対し定義される

$$C^{\star}_{\succsim}(B)=\{x\in B\mid{}^{\forall} y\in B, x\succsim y\}$$
から誘導される組$(\mathcal{B},C^{\star}_{\succsim})$は選択構造となり, $\succsim$ が生成する (generates) 選択構造という.

注意14.

$C^{\star}_{\succsim}$ が空集合となった場合には存在しないが, 有限集合ならば必ず存在する(→Ex. 1.D.2). 面倒なので, 以下では存在する場合についてのみ考える.

命題15.

合理的な選好関係 $\succsim$ から生成される $(\mathcal{B},C^{\star}_{\succsim})$ は顕示選好の弱公理を満たす.

証明. 定義より容易.

後者について議論しましょう.

定義16.

ある合理的な選好関係 $\succsim$ が与えられている選択構造 $(\mathcal{B},C)$ を生成するならば, $\succsim$ は $C$ を合理化するという.

注意17.

当然ながら, 合理化する選好関係は一般には一意ではない.

また, 生成しなくても

$${}^{\forall} B\in\mathcal{B}, C(B)\subset C^{\star}_{\succsim}(B)$$
だけでよいとすることもある.

しかし, 実は顕示選好の弱公理は合理化する選好関係の存在性を保証するには不十分です.

例18.

$X=\{x,y,z\}$, $\mathcal{B}=\{\{x,y\},\{y,z\},\{x,z\}\}$, $C(\{x,y\})=\{x\}$, $C(\{y,z\})=\{y\}$, $C(\{x,z\})=\{z\}$ とするとき, 顕示選好の弱公理を満たすが合理化する選好関係は存在しない.

命題.

顕示選好の弱公理を満たし, 3つ以下の元からなるすべての $X$ の部分集合を含む選択構造 $(\mathcal{B},C)$ に対し, $C$ を合理化する選好関係が一意に存在する.

略証. 顕示選好 $\succsim^{\star}$ が所望の選好関係であることを示せばよい. すなわち, ① $\succsim^{\star}$ は完備性と推移性を有していて, ② $C$ を合理化して, ③ 一意であることを示せば良い. ①の推移性で3元集合の存在を用いる. ②は愚直にやればよい. なお, $\mathcal{B}$ はすべての2元集合を含んでいたので, それらによって合理化する選好関係を一意に復元することができるから, ③も示される.

とはいえど, この設定はいささか経済学において特殊にすぎるので, 第3章でもう一度論じることとしましょう.

あと演習問題は基本的に素直な上に, 問題書いて解答書いて......ってやるのが著しく面倒なので, 今のところは省略します. 要望があるか, 自分の気が向くかしたら, 書くかもしれません.

【読書録】『多体系と量子場』

岩波講座 物理の世界 量子力学〈5〉多体系と量子場

岩波講座 物理の世界 量子力学〈5〉多体系と量子場

というわけで読んでみましたが, ページをめくるごとに涙が止まらない作品でした. 感動の一作. 新井朝雄先生のご著書はどれも外れがないことで有名ですが, これはもう本当にヤバい. エモさがヤバい.

どのようにエモいのか説明しなければならない. まずこの本は「量子論的な多体系」を研究しなければならないというモチベーションから始まります. そこで出てくるのが不可弁別性の原理:「同種の粒子どうしは互いに区別できない」という原理です. すると本当に簡単な議論から粒子の統計性:「同種の粒子の $n$ 粒子系の状態を表す関数は対称であるか反対称であるかのどちらかでなければならない」が導かれちゃう......マジか??? で, そうすれば $n\,(\geqq2)$ 粒子系の任意の状態を, 対称な関数で表せる粒子をボソン, 反対称ならフェルミオンとよぶ......そういうことだったのか......その後はボソン側でボース・アインシュタイン凝縮, フェルミオン側でパウリの排他律を説明して見事に第1章のフィナーレ......悪魔的演出......特にパウリの排他律って化学とかでも出てくるのでかなり感動しました.

あとはそれぞれの量子場について議論をしている. ボソン側はボソンフォック空間を(本当に自然に)定義したあと, 生成演算子・消滅演算子を説明したあとに, ボース場と, ボース場に同伴する粒子がボソンであることを示しています. あとはちょこちょこ重要な例を述べて終わり. フェルミオン側もほぼ同じ. つまりこの本は全3章が「すべて必然性を持って存在している」わけです. 論理がキレイすぎる.

ちなみに最後に線形代数的な補足があります. まあいつもどおりなんですが, こんな言葉がありました.

本書を通読する上ではヒルベルト空間の細かい定義を知る必要はなく, 次に述べる事実だけをおさえておけばよい. すなわち, 内積空間は完備化という手続きにより, つねにヒルベルト空間に拡大できる. したがって, 内積空間はヒルベルト空間の部分空間と考えてよい.

こういうセリフをちゃんとバシッと言えるのが数理物理学の新井先生だからこそかなと思ってしまった.

とにかく, 本当にいい本です. ちなみに今は絶版らしいので図書館で見つけましょう.